不純な動機
若い頃は
何かが激しいエネルギーになる。
その何かは
自分でも分からないものだった。
絵を描くことが好きな青年は
何でも描こうとした。
花でも鳥でも風景でも
男でも女でも描いた。
そのエネルギーの源は何なのか
自分でも分からなかったが
描くことが楽しかった。
クロッキー教室で
裸婦を描くことに熱中した。
たまたま向かいに座る女性も
クロッキーとして描いた。
裸婦を描きながら
向かいに座る女性のスカートの中が
見えそうでドキドキした。
足を組みかえるたびに目が行った。
目の前に全裸の女性がいるのに
何故に見てしまうのだろうと。
そんな不純な自分が恥ずかしかった。
見ないようにしても
見てしまう。
いやイケナイ。
集中することは 純粋に
裸の女性を見つめて描くことなのだ と
不純な動機を振り払った。
今でも
電車の向かいに座る女性の
スカートの中が見えそうになると
目が行ってしまう不純なオヤジ。
自分の純粋な本能を
笑ってしまう年齢になっていた。